10月31日土曜日午後4時。パリの街は静まっていた。洋服の売っているブティック、アクセサリーの店、化粧品店、下着の店、靴店、昨日までこの時間に明るい光と私たちを誘惑する美しく楽しい物で溢れていた商業施設はすべてシャッターを下ろしていた。土曜日の、一番、お客で溢れる、商店にとっては稼ぎ時の昼下りだというのに。
新型コロナウイルスによる政府発令のコンフィヌモンによって営業できなくなったのだ。
私は急に20年前、フランスに旅行に来て、飛行機に預けたスーツケースが紛失に遭い8日間届かなかった経験を思い出した。下着がないのは辛かった。ツアー旅行なので毎日団体行動で田舎を行程ぎっしりで旅行し、店舗に行けず、毎日ホテルも変わるので洗濯して乾かすこともできない。毎日同じ服で写真に写っていた。顔も疲れ果てていた。
そもそも下着や服は生活必需品ではないのか。「衣食住」が基本と言うではないか。
携帯電話のお店は、今回のコンフィヌモンでは開いているようだ。パソコン機器の店も開けていい。一方で、10年前は私は今のようなスマホを持っていなかったし、1ヶ月スマホなしで生きていける人もいるだろうけどね、とも思う。日曜大工の店や生活雑貨の店も、営業しているようだ。前回もそうだったが、タバコ店の営業は認められている。
国によって、権力によって、これは生活必需品で、これは生活必需品ではない、と分けられることに、居心地の悪さを感じる。一つの価値を押し付けられている気がする。スマホやタバコは必需品だが、下着や服は必需品ではない、と誰が決めたのだろう。
10月31日のテレビのニュースがいくつかのお店が店を開けなければ倒産してしまう、と政府のコンフィヌモンに抵抗して店を開けている、と伝えていた。服のブティック、靴のブティック、書店...。靴店の店主は「スーパーでは靴を売っているではないか。説明してくれ」と怒っている。
そうだよね、私は街中で靴のかかとが外れて、歩けなくなり、靴屋に走り、靴を一足その場で買った経験も思い出した。あのとき、確かに私にとっては靴は、普通に人間として暮らしていくための必需品だった。
実際のところ、食料品も売る大手スーパーでは、店舗にもよるが、化粧品、服、下着、靴、靴下、文房具なども売っている。前回の3月からのコンフィヌモン中は買うことができた。それらを売らない、となると消費者としても、困る。私も前回のコンフィヌモン中、布地屋さんなども閉まっていたので、スーパーで柄が気に入ったフキンを買って、マスクを作った。
【これは靴屋さんでなくチョコレート屋さん。営業できる】
首長の考えもさまざまなようで、パリ近郊のイエール市長は31日のテレビで「小売店に仕事は必要だ。人は衛生の問題でも死ぬが、経済的に困窮して死ぬこともある」と話していた。イエールに住む友人に連絡を取ったら、「市長のおかげでイエールの小売店は開けることができるようになった」と喜んでいた。いいことだ。住民にとっても。さらに人々が自分の住む町の小売店に出会うきっかけにもなるだろう。
【マカロンを売るお菓子屋さんは、営業できる】
翌11月1日になって政府は、書店など小売店は商品を予約してもらって、客は受け取るシステムで営業を再開できることにした。一方で、大手スーパーの必需品でない売り場は、平等にするために来週から営業できないことになった。この措置は11月12日まで続き、新型コロナウイルス流行の状況を見て見直されるだろう。
まずい、一番近くのスーパーはどうなるのだろう。もしかして洋服や靴下、下着なども売っているフロア全面閉めるのだろうか。同じフロアにあった電球やトイレットペーパー、文房具等も買えなくなるかも。前回マスクを作ったフキンもその場所で買ったのだった...
【パリの美しい書店。店舗には入れず、予約の受け渡しだけが可能になる】
さらにオリビエ•ヴェラン保健相が「今年のクリスマスは通常通りではないでしょう」と、言い出した。科学者たちも第二波は1ヶ月では収まらないと言っている。この生活いつまで続くのか....
（注）
写真は再コンフィヌモン以前に撮影
近く閉鎖される売り場リスト
les rayons de produits culturels (livres, CD, DVD)
les rayons jouets
les rayons textiles
les rayons bijouterie
les rayons maquillage
les rayons décoration et arts de la table
les rayons électroménager
les rayons fleurs
