パリ徒然草

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サン•メリ教会の悪魔

 パリのサン•メリ教会(L’église Saint-Merri または Saint-Merry) に、悪魔がいるーと、知ってましたか?

 

 故澁澤龍彥先生が「秘密結社の手帖」(1984年発行)の102ページで書いています。

「パリのサン•メリ教会の正面入口に、醜怪な悪魔の浮彫があるが、ひとびとの語り伝えるところによると、これがテンプル騎士団のバフォメットだそうである。ただし、この俗説の裏付けになるような歴史的資料は、まだ発見されていない。その浮彫の像は、背中に二枚の翼を有し、胸に大きな乳房を押し垂らし、両足を組んで坐っている。じつに醜悪な容貌をした悪魔である。二人の天使が、悪魔の左右にはべって、香を捧げている。」

 

 見に行ってきました。パリ4区のポンピドー・センター近くの教会です。


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 おお、見つけました。確かに正面入口で見上げると、尖頭アーチの頂点に君臨しています。


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 背中に二枚の翼があって、胸に大きな乳房があって、両足を組んで座っている、のは確かですね。角もあります。私には醜悪な容貌をした悪魔というよりも、ちょっとお茶目、可愛らしくも見えました。

 

 フランス語でも、少しネット検索してみました。

 

https://www.pariszigzag.fr/secret/lieux-insolites/le-diable-veille-sur-leglise-saint-merri

 

 3年前に書いたこの方のブログは、テンプル騎士団のバフォメット説を否定し、19世紀の修復の際に作られたものではと言っています。

 

https://www.routard.com/reportages/cid133838-les-mysteres-de-paris.html?page=3


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 ルター(routard)というフランスの有名な旅行ガイドブックのサイトの説明は澁澤先生と同じ意見です。やっぱりこれは、悪魔のようです。

 
 「醜い、あごひげを生やした、角のある、山羊の頭とコウモリの羽を持つこの淫婦」と説明していますが、私には「山羊の頭」には見えません。「コウモリの羽」とも思っていなかった。写真がボケていて、あごひげも良く見えていなかったけれど、「秘密結社の手帖」に掲載されている写真を見ると、あごひげがはっきりしています。

 

 ルターのサイトの説明によると、一部の歴史家によると、錬金術師と関係があるという説もあるそうですよ。そう言えば、この近くに中世の錬金術師とも言われるニコラ・フラメル(Nicolas Flamel)の家(51 Rue de montmorency)

がありますね。パリで最古の家とも言われています。

 

 ウンベルト・エーコの小説「フーコーの振り子」(1988年)の中にも、バフォメットを思わせるこの彫像について書かれた箇所があるようです(ルターのサイトとウィキペディアフランス語版より)。この小説はテンプル騎士団を扱っています。フーコーの振り子も、ここからそう遠くないパリ工芸博物館(Musée des Arts et Métiers)にありますね。


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ストラヴィンスキーの向こうにあるサン•メリ教会】

 

   サン•メリ教会自体も、歴史のある重々しい教会でした。

 悪魔ですか? バフォメットですか?ー教会の人に聞いてみようかな?


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【サン•メリ教会内部】

 

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