木はそこから、動かない。
大地に根を伸ばしどっしり立っている。
去年のコンフィヌモン(ロックダウン、外出制限)。フランスのほとんどの公園が閉まったが、公園の木々たちは全く困らなかった。
公園が閉まっていて困ったのは人間だった。私だった。
コンフィヌモンを経験するまで、木に心から感謝したことがなかった。当たり前にどこにでもあるものだと思っていた。石造りの街パリに閉じ込められて初めて、木の大切さが分かった気がした。
木の下にたたずむ。
木の下で深呼吸する。
木は旅しないのだろうか?
木は空を目指している。
と同時に木は地球の奥底も目指している。根を延ばし、地底深くに届こうとする。
そして、木は時間を旅している。
私の生まれるずっとずっと前からそこに存在し続けた木がある。鳥や虫やリスたちの住み家になって。
私はパリの森で、例えばブローニュの森でリスを見かけた。
今日、私は木に感謝する。
酸素を吸って二酸化炭素を吐いて、木にありがとう、と言う。
木に触れる。
地中深く延びた根を想像し大地と繋がる。
地球と繋がる。
ただ、そこにいていいんだよ。
そのままで、そこにいていいんだよ
木は何も言わないけれど、木に触れた手から、すべての命への愛が伝わってきた。
【写真はパリまたはパリ近郊の公園で撮影】