パリ徒然草

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石に惹かれる

 評論家で翻訳家、作家の澁澤龍彦氏の石についての言葉を集めてみた。
 
 石とは、すなわちユートピアなのである。ユートピアという空間を一点に凝集した物体なのである。
    「時間のパラドックスについて」
「思考の紋章学」(河出文庫)に収録


 当り前といえば当り前の話であるが、石は作品ではないのである。石は芸術の対象ではなくて、おそらく魔術の対象なのである。それゆえにこそ、石はさまざまな形態の伝説を生み、伝説はただちに形而上学にむすびつくのであろう。
「石の夢」
「胡桃の中の世界」(河出文庫)に収録

 最近、石に惹かれる。

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 きっかけは、ルーヴル美術館古代オリエントコーナーで紀元前2世紀や3世紀のネックレスやピアスを見たことだった。カーネリアンという赤い石は、ほかの展示の地味な色と違って、美しい色彩のままだった。人類はこんな太古の昔から祈りを込めて石を身に着けていたのだ、と感慨深かった。

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 天然石が何らかの象徴とされていた最も古い記録は「旧約聖書」だと、宇野正美さんのYou Tubeで知った。


イスラエルの祭司の胸当てに、12種類の宝石を12の部族のためにつけなければいけない」これが誕生石の基になったとも言われている。

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旧約聖書「12の宝石」
○紅玉髄(べにぎょくずい):カーネリアン

○水晶(すいしょう):クォーツ

○赤縞瑪瑙(あかしまめのう):サードオニキス

○黄水晶(きすいしょう):シトリン

○瑪瑙(めのう):アゲート

紫水晶(むらさきすいしょう):アメジスト

○黄碧玉(おうへきぎょく):イエロージャスパー

○縞瑪瑙(しまめのう):オニキス

○碧玉(へきぎょく):ジャスパー

○貴橄欖石(きかんらんせき):ペリドット

○柘榴石(ざくろいし):ガーネット

○瑠璃(るり):ラピスラズリ

 私が高価なアクセサリーを買っていたのは、ずっと昔。社会人になったばかりのころだった。引き出しの奥から何年も前に買ったムーンストーンやルビー、ガーネットの石がついたアクセサリーたち。全く色が変わっていなくて、今でもつけられるものばかりで、不変であることに感嘆した。

 そして、指輪やブレスレット、そして、アクセサリー用の小さな石、置いておく石など、いろんな石、パワーストーンを買うようになった。今日までに買ったパワーストーンの名前をここに書いてみる。

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 ローズクオーツ
 スモーキークォーツ
 カーネリアン
 アマゾナイト
 アゲート
 シトリン
 ムーンストーン
 ラブラドライト
 アクアマリン
 ラピスラズリ
 タイガー・アイ
 イーグル・アイ
 アメジスト
 フローライト

  
 石が凄いのは、光によって色が変わることだ。ラブラドライトはグレーなのか、青なのか、黒なのかくるくると変わる。一般的には、宇宙を表現していると言われているけれど、それは、私には地球のように見えた。その石を使って自分でイヤリングを作った。自分の耳に宇宙か地球がついている、って凄い。

 You Tube開運とよぴーチャンネルを見る。パワーストーンの専門家のとよぴーさんは、「石には太古の記憶がある」と言った。

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 こういう物のお値段というのはピンきりである。私が買った、アクセサリー用の、一番安い石は6個で1.5ユーロである。パリの路上だとブレスレット5ユーロから、インド人街のお店だと9ユーロから売っている。1個1ユーロ以下で、石が買えて、太古の記憶までついてくる、と考えると、安くないですか?

 今まで、気づいてなかったけど、パリにはたくさん天然石を売っている小さなお店がある。歩けば、すぐ、当たる。パサージュの中にもあるし、路面のショーウインドーに石のついたアクセサリーを展示しているお店。時々お世話になる時計屋さんも一角に天然石アクセサリーを売っていた。自分の焦点が変わると見えるものが違ってくる。

 こんな無駄なことを楽しんでいる。それでいいんだよ。デルタ株、オミクロン株、刻々と変化する状況。刻々と変化する規制。そういう情報を追いかけたって、一人の人間ができることは、とても小さい。目に見えないウイルスの前で、刻々と変化する状況の中で不変のものに惹かれたのかもしれない。


【写真はすべてルーヴル美術館古代オリエントコーナーで撮影。紀元前2−3世紀のもの】

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澁澤龍彦「石の夢」~『日本の名随筆 石』を読む その11~

https://www.megalithmury.com/2017/01/11.html?m=1