パリ徒然草

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お気に入りの石を探す贅沢な時間

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 水晶の中に針状の鉱物(ルチル)が閉じ込められた神秘的な石、ルチル•クォーツ。この石に惹かれたのは、今から20年以上も前、女友達が彼女の指輪を私に見せたからだった。


 彼女の指輪は、金の指輪で、金色の線が入った透明感のある石がついていた。


 当時、私は、耳がかぶれたことがあって、自分を金属アレルギーと思っていて、医者の助言に従って金かプラチナのアクセサリーしか、買っていなかった。一番好きな金属はプラチナだった。

 ゴールドの金色は、色が強すぎてあまり好きでは、なかったはずなのに、友達の指輪は、石の中に入っているゴールドの線とゴールドがとても良く合っていて、お洒落だなあ、いいなあ、私も欲しいと思った。私の記憶では、その当時、その指輪は34000円か、28000円だった。なぜ、そんな数字が今でも、現れるのだろう。現金を準備したのかもだし、当時、私はそのお金を払う用意があったのだ。

 友人と同じ指輪が欲しいと思った。街中の宝石店を探した。そもそも、その石のアクセサリーが見つからなかった。

 やっと見つけたのが手作りのシルバーのルチルクォーツの指輪だった。形も均等でないし、石も小さめで、友達の宝石店で買った完成度の高い、大人感溢れるゴージャスなゴールドの指輪と違って、素人っぽくて、友達の指輪ほどには好きになれなかった。

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【20年以上の時を経た私のルチルクォーツ指輪】

 それでも、他に見当たらないので、ルチルクォーツという石が欲しくて購入した。1万円くらいだったと思う。私は安く買えて良かったというより、金色のゴージャスな強いエネルギーのある指輪が買えず残念に思っていた。ネットショッピングというものがない時代で、他の街で探すほどのエネルギーも考えもなかった。
 
 ルビー、ガーネット、サファイア、トパーズ、ダイヤモンド。。。当時、石の指輪をいくつか、買っていた。自分で買ったのである。そのうち、プラチナや金は、値段が上がって行ったので、いろんな石が欲しくなり、ルチルクオーツの指輪を買ったお店で、シルバーの物も買うようになっていった。

 ネットもなくて、情報も少なく、色や形が気に入って買っていただけで、パワーストーンとしての意味を調べようなどという気持ちも、起こらなかった。


 私の友人は私のことをコレクターだと言う。確かに私は、服や下着やCDをたくさん買ってしまう。服や下着は同じデザインを色違いで買ったりもする。

 CDは好きなミュージシャンだと、すべてのアルバムを集めようとしてしまう。流行は関係ない。売れているかもどうでもいい。コールドプレイ、ラジオヘッド、ポーティスヘッド、スティング、U2、ウォンウィンツァンなど。だからCDが300枚以上になってしまう。

 でも、ルチルクォーツについては友人の方が、私よりも、ずっとコレクターだった。

 私は最近までルチルクオーツのアクセサリーをその時買った指輪一点しか、持っていなかった。その指輪も一年前までは箪笥の引き出しの奥にしまわれていた。

 ある日、取り出して眺めたとき、年月が経っても、そのシルバーとルチルクオーツの指輪は変形も変色もしていなかった。そこに感動した。いろんなものが変化するのに劣化していくのに石は変わらないのだ。つけ始めると手作り感溢れるデザインが温かみがあって、愛着が湧いてきた。

 そんな私に比べて、友達はルチルクオーツを6点持っていた。ペンダントトップ、指輪、ピアス。。。

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【友人の私物のアクセサリーの写真。左が私が憧れたルチルクォーツの指輪。石の透明度が高く金色のルチルもしっかり入っている】


 わー、やっぱり友達には負けるなあ。

 今では、You Tubeもありネット検索もできて、パワーストーンとしてのルチルクオーツを調べた。私は友達に言った。

「ルチルクォーツは金運の石らしいよ」

友達「私は金運感じないなあ」

「いやいや、お金は有り余るほどあればいいってものじゃないし、ルチルクオーツのおかげかもしれないよ」

 私は一点、持っているルチルクオーツにご利益を感じている。

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 パリで新しいルチルクオーツを探した。あの頃、他の街で探すことを思いつきもしなかったリベンジを今、果たすのだ。もっとゴージャスな宝石を探そう。


 友達のような透明感溢れるルチルクオーツはやっぱり見つからなかった。ルチルの金の指輪も見つからなかった。

 地下鉄サン・ポール近くのお店で新しいルチルクオーツの指輪を買った。あのときみたいにもっと高価でゴージャスな物がいいと思わなかった。私が買ったこの石は私の元に来る運命だったのだ。これもご縁なのである。この指輪が私にぴったりなのだ。私の元に来てくれてありがとう。

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【最近買った私のルチルクォーツの指輪】

 探している間の時間も愛おしい。それはパリのパワーストーンや宝石のお店と出会う素晴らしい時間だった。パサージュの中にもお店があった。

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 そして、私は石について書いた多くの作家、哲学者、心理学者たちのことを思った。澁澤龍彦吉本ばなな、ロジェ•カイヨワ、ユングアンドレブルトン..。

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