パリ徒然草

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日本での生い立ちのせいか、フランスの義家族といるのが楽しい

 

 フランス在住の日本人妻たちがフランスの義家族との付き合いが疲れる、誕生日のプレゼントのやり取りやクリスマスが嫌だーと言っているのをツイッターで見かけた。私はクリスマスや誕生日の夫の義家族やその友達との付き合いがむしろ好きだけど、日本でも嫁姑問題もあるし、そう思う人もいるかもね、とは思う。

 

 日本で高校生の時、私の誕生日に母に「ケーキ買って帰るね」と電話したら、「ケーキなんて高いもの、買わなくていい。私は食べたくない」と不機嫌に怒鳴り散らされた。自分のお小遣いで買ってもいいと言ったのに、である。母は私の誕生日をすっかり忘れていた。私は、そういう日本の家庭で育った。私にとってそれは、当たり前のことで、それを悲しいとか思うことなく、世界中の家族がそんなものと思っていた。

 

 私は母の愚痴を、母の不機嫌を、生きることの楽しくなさ、面白くなさを、私という子供を育てるために不幸を我慢し続けているので恩義を感じないといけないことを3歳から聞いて育った。私の問題を親に話すことはなかった。できなかった。子供心にこの親には余裕がない、と知っていたからである。

 

 大人になって子供のころ苦しかったことがあったと打ち明けても共感ゼロで、むしろ話さないおかげで私はなんとか生き延びることができたのだ、と思った。子供心に、話さないことによって自分を守る、と分かっていたのだろう。

 

 どうやら、私自身の育てられ方は、毒親育ちとか、アダルトチルドレンに近いものがありそうである。(2年前に「毒親」という言葉を聞いたときは親に「毒」をつけるなんて良くないと思い、そういう情報から遠ざかったのだけれど、有名な作家の中にもアダルトチルドレンであると告白している人がいると知り、今は、私も向き合おうと思うことができた)そうなってしまったのも、両親とも、子供の頃あまりにも貧しく余裕がなかったことも無縁ではない。

 

 下のYouTubeでは、毒親問題について親世代が子供だった頃の「戦争の影響」を指摘している。親世代は世の中を怖いところと思い、不安が大きく、感情麻痺に陥っているという。

 

https://youtu.be/o_9Vm6AxUI4

 

 まあ、そうかもしれない。母の姉である叔母が人間の死体が何体もプカプカ浮いている絵を80歳も過ぎて最近になってNHKに提出していた。小学生でそんなものを見てしまったのだ。原爆の被害から逃れてきて防空壕で暮らす人たち、ボロボロで貧しく何とか防空壕で生きる人たち、いまやどこに行ったか分からない人たちのこともNHKに話していた。人間がこんな目に遭い誰も助けず、ただ恐れられ、差別されるのを子供の目で見たのだ。ヒューマニズムと無縁の世界だ。学校で「人権」を教えたところで、実はそんなものないことをを子供に見せつけている。叔母が感情麻痺だったとしてもおかしくない。叔母のトラウマを誰かが癒やしたわけでもない。

 

 そう思えば、親世代も可哀想な人たちだ。戦争は庶民の子供たちの心を蝕む。どっちの国がいいとか悪いとかではなく、ただただ戦争がないことを心から望む。

 

 そんな家庭に育ったせいか、私は夫の義家族の家族関係が微笑ましい。誕生日に気球に乗るプレゼントをしたり、誕生日に50人以上集まるパーティーをしたり、お手伝いするのも会話も楽しい。

 

 夫の家族に誕生日のプレゼントをあげられるのも嬉しかった。そして、自分も受け取るようになり嬉しかった。覚えててくれてありがとう。もらったプレゼントそのものが役に立つかどうかではない。無駄なことを、生きていることを、生まれて来たことを喜び合えるのが楽しかった。夫の家族と接したことで、気づきや癒やしがあった。

 

 義家族の方が男女差別も感じない。日本の実家に帰ると、家庭内で性差別があるのが嫌になる。物心ついたときから兄弟や男の従兄弟たちは全く家事をしなくていいのに、女である私は家事をしなくてはならなかった。

 

 だから、日本の実家に帰ることが楽しみというより、実家に帰るとは、女中として働きに行くようなものである。掃除、料理、男性陣へのお酒のサービス。良く働いて当たり前。しばしば気が利かない、早くしろ、と非難される。そんな環境で生きることだった。私は家に居るのに常に緊張しているのだ。

 

 例のごとく、先日、フランス人の夫の家族と最近も食事した(写真はその模様。メインディッシュは鶏肉のハーブ煮込みとポレンタ)。大学生のおいも参加しにぎやか。90歳の義母の誕生日にベニスまで家族旅行しようか、という話が出た。わ~、楽しみ。いいなあ。みんなで一緒にベニスに行けるの、面白そうだな。

 

 ベニスは一人で行ったこともあるし、7年くらい前に夫とも行った。4つ星の凄く素敵なホテルに泊まった。いいな、いいな、また行けるの楽しみだな。

 

 おかしなことに私は日本の実家よりは、夫の義家族といる方が気楽で、自分らしいと気づいた。日本の実家にいるように緊張していない。常に体中に力が入った感覚がない。

 

 今が良ければ、すべて良し。ありがとう、夫と夫の家族。