パリ徒然草

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一時帰国での親との距離 工事で天井から水漏れの実家にて

 日本帰国を前に、実家滞在を前に、親への対処法を考え続けて参戦した日本帰国だった。

1,親と違う意見はできるだけ言わない

2,話し合って分からせようとしない

3,話を合わせつつも、すべての言葉を本気で受け取らない

4,自分のエネルギーを奪われないよう気をつける

5,親よりも自分が最も大切。自分には価値があると言い続ける

 

 これが全部できたのかは分からない。ただ、現在、実家滞在を終えて思うことは親子であっても、感性は全く違うということだ。それは、別々に暮らすようになってますます顕著になった。そして、それは、どちらが正しいかを競うものではないということだ。

 

 私の実家は、私の滞在の中頃から外壁塗装と屋根塗装の工事に入った。約1年間パリでアパートの屋根の工事に悩ませれてきたことは書いたと思う。ところが久々の日本もまた、工事の渦中となった。工事初日に足場で家は覆われ、幕が張られ、すべての窓を開けられないようになった。

 

 もし帰国が私1人だけだったら母は工事を私の滞在初日からすべての滞在に充てるつもりだった。だが。運良く4泊した夫のため、実家を週末に訪ねに来たおばやいとこのため、結果的に工事を2週間、延長してくれた。助かった。ありがとう、夫、いとこ、おばたちよ。ありがとう。

 

 母は身内に(というか、女である私には特に)厳しく、他者に優しい。だから、他人からは「優しそうなお母さん」としか言われない。

 

 工事が始まると、私がいた部屋は騒音という意味において最も影響を受ける部屋となった。

 

 ちなみに、私が母に以下のサイトを見て、外壁塗装の工程についてネットで調べたと話したところ、母に、猛烈な勢いで批判された。「業者を信頼し、業者に任せて何も調べる必要ない」と私に怒っていた。調べるだけで駄目なの???

 

外壁塗装の流れまとめ|外壁塗装の全工程&期間がまるわかりhttps://protimes.jp/journal/gaihekitosou/gaiheki_process-65108

 

 私は音に対して敏感なのに、高圧洗浄時家にいて、機械のエンジン音や洗浄時壁に当たる音が凄くて、キツかった。高圧洗浄の日、たまたま、ずっと実家にいて騒音に疲れてしまったので、今後の工程を知っておきたいと思ったのだった。そんな私を母は、「敏感過ぎる」と批判していた。

 

 一方、工事の男性たちは実家のトイレを毎朝のように、使うようになった。母は清潔感などは敏感で、朝、工事の人たちがトイレを使った後、直後に念入りに掃除していた。超本格的トイレ掃除である。私はそんな母を清潔感に敏感だなあ、これではパリの公共トイレは使えまい、と思う。

 

 一方で、母は、まだ一応、自分を女性だと思っている私への配慮は一切ない。工事が始まってからというもの、洗濯物を物干しに干せなくなった。そこで私は風呂場に下着を干していたのだが、実家の間取りは風呂、洗面所、トイレが同じ場所にあり、風呂場の扉を閉めず、トイレに人を入れると風呂場や洗濯かごの洗濯物が見えてしまう。母は、そのことを一切気にせず、男性をトイレに案内するので、私は風呂場の扉を閉めるため、2度全力疾走した。

 

 何に敏感かは人それぞれである。

 

 詳しくは書きたくないが、こんな母の鈍感さのおかげで私は子供の頃、私自身が男子に嘲笑されていたことを知っている。

 

 高圧洗浄の日の後、私の部屋に水たまりができた。天井からの水漏れだ。人生で初めて天井からの水漏れを経験した。運のいいことに、手のひらサイズの水たまりは、私が開いた写真アルバムと本、洋服の間にできていた。

 

 母にそのことを伝えると、翌日、極めつけの出来事が起こった。私はその場にいたのに、私に一言の了承も取らず、工事の男性を私の部屋に入れて私の部屋を見せていた。スーツケースが大きく開かれ、下着もはじめ、物が散らばった部屋へ男性を案内していた。これには驚くより呆れた。

 

 実家に、もう私の部屋はないのだ、と思い知ることができた。

 

 そして、今はこうも思う。実家がくつろげないから、ここには私の居場所がないと強く感じることができたから、遠くへ行けたのだ。遠くへ行けて、良かった。

 

 ある日の午前中。母は、出かけて私と工事の人がいた。私も友達と午前10時に約束していた。友達と電話で話していると、後ろから工事の男性が「トイレ貸してください」。私は例のごとく全力疾走し、「どうぞ」。そして、固定電話に戻る。

 

 この日は、塗装工事の中で、「養生」と言って、養生テープを貼る日だった。玄関の扉に養生テープを貼っているので、なかなか、出かけられなかった。工事の人が玄関にテープを貼り終わって、私は玄関の鍵を閉めようとしたが、今度は鍵が締まらない。「もう少しピッタリ貼り直しますよ」と工事の人。わ~。約束に遅れるよ。どうしよう、どうしよう。焦るー。

 

 おかげで、一戸建ての屋根や外壁の塗装工事について少し知ることができた。塗装工事は10年から15年に一度した方がいいらしい。一戸建てを守り続けるって大変なことだなあ。これまで、そして、今も母がこの工事の世話をし続けてくれたのだ。そのおかげで、一時帰国しても、滞在できる場所があるのだ。感謝しよう。

 

 でも、それと、母が私に言う言葉を真に受けるかどうかは別問題である。何かを調べただけで、「養生」という言葉を覚えただけで、音に敏感なだけで、批判され否定される筋合いはない。そういう感性を持つ私にだって価値はあるのだ。親の言う通りにすべてを変えなければいけない、とは思えない。

 

 話を合わせつつも、すべての言葉を本気で受け取らない。ー少しでもできるようになっただろうか。まだまだ精進である。