パリ徒然草

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日本への一時帰国が憂鬱 フラッシュバックに気づく

 この10数年で最も高い買い物、それが日本行きの夫と私、二人分の往復チケットだった。こんな長い距離を一緒に旅するのも初めてだった。新婚旅行はパリからカンヌに行った。

 

 それなのに、日本行きが近づくに連れて私は鬱っぽくなった。泣き出すことも、あった。まともに準備ができなくなった。

 

 「毒親」や「アダルトチルドレン」のタイトルの動画を見れば見るほど、それは、私自身のことだった。もっと以前に私はそうなのかもと思うことはあったのだが、家の恥、家族を悪く言ってはいけない、という儒教的な日本社会の無言の圧力から、他人に話せる機会もなかったし蓋をしてきたのだ。

 

 動画を見ていたら私はさまざまなことが符に落ちた。腹に落ちた。私自身が解明されていく気がした。

 

 アダルトチルドレン気分障害を持っている、とYouTube精神科医が言った。子供のころ、突然巻き起こる暴力的なシーンを見たせいで、他人の顔色を伺い、他人の不機嫌や怒りに影響を受けすぎて、感情をコントロールできない、と。

 

 

 例えば、約1年半前、フランスで起きたテロのテレビのニュースを見ながら夫や友人が私の眼の前で激しい怒りを犯人にぶつけるとき、私の心は犯人よりも、夫や友人の怒りの態度や声の大きさや表情に怖くなって、気分が悪くなっていた。

 

 友人が電話をかけてきて泣いたり怒ったりしながら夫婦関係の問題を話したとき、私は友人の心理状態に影響されて、しばらく力が出なくなっていた。他人の話を聞いただけじゃないか。なぜこんなにもエネルギーが吸い取られるのだろう。

 

 これらは子供時代の家庭での経験のフラッシュバックだったのだ。PTSDの症状だったのだ。

 

 あまりにも、エネルギーが奪われるのがおかしい、と心理カウンセラーに相談したりもしたのだが、これまでに誰も、幼少期のトラウマかも、と指摘してくれる人がいなかった。友人と距離を置いた方がいいと言われたりはした。

 

 

 なぜ私が音に敏感なのか、好きなアルバムだけを何度も聞いて、ラジオを聞くのが苦手なのかも分かった気がした。好きなアルバムの次が予測できる展開に安心できるのだ。YouTubeで音楽を聞くのが最悪で、途中で大きな音量でCMが入ると、それまで聞いていたのが、どんなにいい音楽だったとしても台無しになってしまう。

 

 気づいたことは良かった、と思う。

 

 ただ、気づいたせいで、日本行きは憂鬱なものになってしまった。まあ、こう考えることも、できる。日本行きは一つのセラピーかもしれない。トラウマ治療はとことん向き合うか、離れるか、だからだ。

 

 日本に行った私は、以前もそうしてきたように、しっかりもののいい子の仮面をつけるのだろうか。大人としていろんなことをこなすのだろうけれど、置き去りにされた子供の心の私は助けて、と叫んでいる。