パリ徒然草

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コロモイスキー氏とゼレンスキー氏 (ウクライナ政治を知っておこう①)

 ウクライナという国と私は、縁がなかった。ロシアなら私も夫も、ドフトエフスキーを読んだり、タルコフスキーの映画見たり、それらの小説や映画について夫をはじめいろんな人と語り合った。パリのロシア正教会に行ったこともあった。

 私とウクライナの意識した出会いは今回の戦争であり、ゼレンスキー大統領の国会演説だった。「日本と心は一つ」というゼレンスキー大統領の言葉に日本の国会議員たちが拍手喝采するのを見て、目が覚めた。知っておくしかないと思った。

 日本は金銭的にウクライナを支援しているだけでなく、移民も受け入れている。日本人として、これまで何も知らなかったウクライナ政府や政治について多少は知っておくべきだと思った。

 まずは、前回も少し取り上げたゼレンスキー大統領についてもう少し調べた。

 ウィキペディアでも、多くのことが書いてある。


ウォロディミル・ゼレンスキー
ウクライナの政治家、元俳優、コメディアン、第6代ウクライナ大統領(ウィキペディア
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AD%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC

 改めて、ゼレンスキー大統領が就任した2019年4月ごろの記事を読んだ。

「政治経験のないコメディアンがウクライナ大統領選で圧勝できた理由」(ダイヤモンドオンライン)2019-04-23
https://diamond.jp/articles/-/200477

「コメディアン大統領はウクライナを救えるのか ゼレンスキー氏のポピュリズムと政治課題」 2019/05/31 東洋経済
https://toyokeizai.net/articles/-/284152?page=6


 「2000年からの3年間、ゼレンスキーはモスクワ暮らしを続けた」(東洋経済)。ゼレンスキー大統領はコメディアン時代の3年間はロシアに住んでいたのだ。ロシアのショービジネスと関係が深かったのだ。


 コメディアンから俳優になり、2015年から始まったロシア語のテレビドラマ「国民の僕(しもべ)」の大統領役で国民的人気を得て、現実の大統領選に立候補し、当選した。『ダイヤモンドオンライン』によれば、このドラマは「汚職や不正を嫌う30代の教師を演じ、ソーシャルメディアの力によって主人公が教師から大統領に転身し、ウクライナに存在する様々な問題を解決していく」という内容である。

 2019年3月31日に行われた大統領選挙の直前の、3月28日まで毎週木曜日に放映されていた。正義感を抱く青年教師が大統領になって辣腕を振るうという物語が、大統領選投票日の3日前まで流れていたことになる。

 大統領選挙の候補者が選挙期間中に大統領を演じるドラマに出演するのは、メディアを使った典型的なプロパガンダ活動でフェアではない、事実上の選挙広告だという声が大学教授やジャーナリストからは上がっていた、ともある。


 このドラマを放映したのは、「1+1」というテレビ局で、ゼレンスキー氏が出演する番組のほとんどは「1+1」で放送されていた。「1+1」のテレビ局オーナーがイーホル•コロモイスキー氏である。コロモイスキー氏はコメディアン時代からのゼレンスキー氏の出資者だった、という記事も読んだ。

 コロモイスキー氏はソ連崩壊後に公有財産を私物化した新興財閥(オリガルヒ)のユダヤ人で、2014年3月から1年間、ドニプロペトロウシク州知事も務めている。

 このウイキペディアを読むだけで十分だろう。

イーホル・コロモイスキー(ウィキペディア
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC

 怪しい。実に怪しい、と思うのは私だけだろうか。


 ウィキペディアによると、「コロモイスキーとそのビジネスパートナーは、ウクライナ最大の銀行プリヴァト銀行から数十億ドルを騙し取ったとして詐欺の疑いで告訴された....」とあるし、資金洗浄疑惑もあるし、「2021年アメリカ合衆国はコロモイスキーとその家族を知事時代の不正蓄財容疑で入国禁止処分とし、ウクライナの将来に深刻な脅威をもたらすと指摘している」とも、ある。


 コロモイスキーは、「ドニプロ大隊の創設に1000万ドルを費やしたとみられており、この他にアイダール大隊、アゾフ大隊、ドニプロ1、ドニプロ2、ドンバス志願兵大隊の各部隊にも資金提供したとみられている」ともある。私兵というのは、日本人の私にはなかなか想像がつかない。アゾフ大隊については次回取り上げる。

 ゼレンスキー氏は大統領就任後、経済への影響力が強すぎるとしてオリガルヒを弱体化させる法案を推進した。オリガルヒの政党への献金や大企業の民営化への参加を禁止するこの法案は2021年9月に可決され、コロモイスキーも同法の対象となる可能性があるとみられている。


 もう一度、ゼレンスキー大統領に話を戻そう。

 ゼレンスキー大統領は、大富豪だそうだ。フォーブスの2021年10月の記事で、タックスヘイブン租税回避地)を利用した取引にかかわっていたことが明らかになった。BBCの記事によると、ゼレンスキー大統領は、2019年大統領選で当選する直前に、資産を秘密の国外企業に移したという。

ウクライナ大統領ら租税回避 フォーブス
https://forbesjapan.com/articles/detail/43650/1/1/1

「パンドラ文書」BBC
https://www.bbc.com/japanese/58784715


 テレビでは、汚職や不正を嫌う国民のための大統領を演じつつ、こっそり税金逃れのために、自分の財産を国外に移す。まさにコメディー。現実は小説よりも奇なり、である。


 ちなみに、ウクライナは、人間開発指数で74位の発展途上国である。加えて、ヨーロッパで2番目に貧しい国であり、非常に高い貧困率と深刻な汚職に悩まされて来た(ウィキペディアより)。

 戦争は、国民の死は、自分の名前を世界中に売るにはあまりにも重い。亡くなったすべての方々のご冥福を祈りたい。

 ゼレンスキー大統領自身の私有財産については、ウクライナ国民だけでなく、援助国の国々の国民からも、ロシアへの経済制裁でガソリンや電気代や物価高で生活が苦しくなった人たちからも、今後、厳しい目が注がれることになるだろう。 


参照記事
2020年5月 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20200521-DAERQE7DJFPX5IKMFOQGYIDYF4/