パリ徒然草

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モンマルトルの春 巨大な監獄を抜け出して

 3月19日木曜日午後4時。
 モンマルトルまでジョギングした。もちろん、外出証明書はしっかり書いて手に持って、スニーカーとスウェット姿で、走った。

 公園をすべて閉められたパリの街には自然がほとんど、ない。石造りの巨大な牢獄のようだ。人通りは少なく、車もあまり通らない。スーパーなどの食料品生活必需品の店と薬局以外の店はすべて閉まっていて、寂しい雰囲気だ。一方で、数百メートル走る度に警察官が配置されていた。

 いつもたくさんの人で賑わっている通り。ここを走れるなんて、何という贅沢だろう、悠々と走れて楽しい、警察官もたくさん私たちの安全を守ってくれてありがたい、と感じてもいいのだろうけど、なかなかそういう気持ちになれなかった。

 モンマルトルの丘の上は警察官たちが、たくさんいて私は悪いことを何もしてないのだから堂々としていていいのに、職務質問されて、身分証や外出証明書見せて、会話するのが面倒だし、感染リスクをあげると思い、近づかなかった。インターネットののニュースで読んだ限り、最初の1日間で4100人が外出していて警察に罰金を払ったそうだ。ジョギングするのも、警察官に何か言われたら嫌だなあ、とおどおどして走ることとなった。

 モンマルトルの公園も閉まっているが、黄色い花が咲き、春を告げていた。最近まで雨の多かったパリ。やっと春らしくなり、お天気もいいのに、出かけられないパリジャンたちのストレスは、相当だろう。それでも、これまでストライキなどで、大騒動した割には、パリの街は驚くほど静かだ。

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(モンマルトル丘のふもと。緑が眩しい)

 ちなみに私は走るときも、手作りのマスクをしている。変なマスクをしているのと、アジア人であるので、あからさまに私を避ける人がいる。それを差別と批判する人もいるようだが、私はラッキーだと思う。それによって感染リスクが下がるのだ。お互いに。

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(モンマルトルの丘)

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(モンマルトルの階段)

 モンマルトルの階段を登るとき、横をすれ違う男性が大きな咳をした。残念ながら私はリスクにさらされてしまった。だから、フランス政府が家にいろ、と言うのは、正しい。

 だが、車の運転にしろ、飛行機に乗るにしろ、何の仕事にしろ、リスクは常に伴って来た。リスクがあると知っていても、人はしたいことがあるものだ。

 午後8時、フランス2のニュースを見た。医療機関でマスクが足りないというニュース。フランス政府は「マスクは一般の人が使っても意味がないので、薬局に寄付して欲しい」と呼びかけていた。

 直後にフランスの田舎に住む友達からメッセージが来た。「明日には森も閉められてしまう」と彼女は書いてきた。森も山も浜辺も行くのが禁止になるようだ。街中に住む者たちがジョギングしていいのは家から500メートル以内。私は落ち込んだ。「政府はこうなる前にどうして手を打たなかったの?」彼女が書いて来た言葉に私も同意する。

 なぜ私たちの自由がそこまで制限されてしまうのだろう。森や浜辺を走っても歩いても、人が集まらなければ新型コロナウイルス感染リスクは大して上がらないはずだ。
 一方で、こうも思う。そこまで制限するのは治安の問題もあるのだろう、と。ニセ警官による金銭被害も出ているようだ。警察としても、森や浜辺、山を管理できないし、そこで、今、犯罪が起きても、対応できないのだ。

 それでも、家から500メートル以内しかジョギングできない、には納得できない。罰金を払うつもりで、ジョギングするしかないのだろう。私には、緑が自然が必要だ。巨大な石造りの監獄の中では、窒息してしまう。