パリ徒然草

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本を注文してもいつ届くのやら?! 「分かりあえない人」が気付きをくれる

 「わかりあえない人」こそが学びや気付きをくれるー。
そんなことを言ったエマニュエル・レヴィナス1906年~1995年)の他者論について、今こそ、じっくり読んでみたいと思った。レヴィナスは、ホロコーストを生き延びたユダヤ系フランス人哲学者である。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%82%B9

wikipediaから引用する。

“現代哲学での「他者」とは、「私の主張を否定してくるもの」「私の権利や生存にまったく無関心なもの」「私の理解をすり抜けるもの」などを意味し、多義的で抽象的な言葉である。言わば、自己(私)の思い通りにならない、よく分からない、「他人的な性質を持つもの」は、どれもまとめて「他者」と名付けられる。”

その後の文章も抜粋させてもらうのだが、そこで出てくる「他者」の代わりに、「新型コロナウイルス」を入れて読んでみた。

 "「新型コロナウイルス」は「理解されえない、言い換えれば包括されることが不可能なものである」とされ、「所有を、私のさまざまな権能を拒む」とされている。すなわち「新型コロナウイルス」は、「私」(自己)の内面を切り崩し、空にし、「私」として安住することを辞めさせ、「私」を超えたものを求めざるを得なくさせる。"
 
 「他者」の代わりに「新型コロナウイルス」を入れても、読めるものだな、と思った。

 そこに、「フランス」を入れたらどうだろう。理解できない他者を「わかる」とは、自分が「かわる」ことーとも言われる。私も「フランス」という他者に出会って知らず知らずに変わっているんだろうな、そういう視点から読んでも面白いのかな、と思ったのだ。

 レヴィナスの代表作の一つ「全体性と無限」。その序文には、私がその言葉に、こだわって何回かこの日記でも書いた「戦争」についての記述がある。

"戦争状態は道徳を宙吊りにする。戦争状態は、いつの世も変わらず永遠だとされた制度や義務から永遠性を剥ぎとり、それによって無条件な命法をすべて一時的に無効にする。戦争状態は、人間の行為にあらかじめ影を落とす。" (序 4行目ー)

 日本語とフランス語で、同時に読もうと思って、
アマゾンフランスでフランス語版(原書)を注文しようとすると、配達が5月22日になっている。ショック! 一ヶ月先しか受け取れない。

 フランスの哲学者の代表作なのに日本語翻訳版はKindelで買えるが、フランス語版はKindelでは読めず、書籍を配達してもらうしかないようだ。恐るべし、日本。フランス哲学がそれほど日本では広く読まれているということでもある。

 今は図書館も本屋も開いていない。本屋は5月11日から開くみたいだ。アマゾンの配達日はなぜかどの本も、5月22日配達になっている。ちなみに私は30回程度フランスのアマゾンを使って注文したが、2回は受け取っていない。どちらも中国の会社からの発送だった。面倒なので返金も要求しなかった。だから、そもそも注文しても100%受け取れるとは言えない。そのうえ、今はパリ市内からパリ市内に郵便を送っても2週間かかることもあるようだ。

 結局、この本をフランス語で読もうと思った思いつき、そのうち忘れているかもしれない。

 本はいつ読むか、ということも大事な気がする。一方でこの本を10代で読んでも広がりを持って読めなかっただろう。書物や音楽は出会いだな、タイミングだな、と思う。

 どんなにいいことが書いてある本であっても、時間があって、読みたいという情熱があって、手元にないと読めない。手元にあるっていうのもまた、縁なのだ。

 マリアンヌ フェイスフルのCDが手元にあったので、20年ぶりくらいに、ステレオにかけた。夫が「Covid19にかかってる人だね」と言った。私は彼女が感染して入院していることを知らなった。情報を見ると、4月5日の記事でロンドンで自宅にいたにもかかわらず感染し、入院とある。若い頃の映像と歌が見れた。こんな人だったんだ。でも、私にとっては、もっとしわがれ声の87年バージョンの方が馴染みが深い。回復したという記事が見つからなかったけど、元気になってーという思いを込めて。


https://youtu.be/LzImOSVYoWI