パリ徒然草

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解除後は全員にマスクという大転換 「顔」と対面しない不安

 世界中でマスクを手作りしている。You Tubeで作り方が世界中で共有される。日本でもフランスでも材料のゴムが足りない。ストッキングや包帯を使うことができるよー。その情報も世界中で共有される。フランスでは生地が買えず、日本では100均の手ぬぐいやガーゼが売り切れてなくなった。ユニクロのエアリズムTシャツで作る動画が上がっている。そうか、私は何で作ろう?

 近くの2軒の薬局には相変わらずマスクは売っていなかった。遠くまで何軒も何軒も薬局を探して歩き続けるのはありだろうか? 何キロ先まで歩けるだろう。いずれにしても、19日の政府答弁で、医療用マスクを薬局で売ると医療従事者分が不足するので、一般市民への医療用マスク販売は奨励しないーと言っていたので、当分は薬局では売っていない気がする。

 そういう状況だから手作りマスクをプレゼントするのもいいかなと思って、使ってなかったブックカバーとスーパーで購入できるDIMのパンツを裏表にして手縫いで作ってみた。フランスの下着はいいものが多く、肌触りが良い。TVのニュースでは2週間ほど前、le Slip Françaisという下着メーカーがマスクを作っているシーンが放映されたが、肌触りも質も良さそう。

https://twitter.com/LeSlipFrancais/status/1248293991923232768?s=20

私の場合は、紐の部分は古いタンクトップの紐の部分を切って、使った。 力作。我ながら上出来と思いながら、配達してもらう形でプレゼントした。

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(表はブックカバー)
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(口に当たる部分をパンツで作った)

 だが、私があげたフランス人は喜んでいないようだ。5月11日以降、義務化されてからマスクは着ける、と言われてしまった。

 そして考えた。

 外出制限解除の5月11日以降、フランスの公共交通機関で全員がマスクを付けるよう義務付ける。それは凄い変化なのだ、と。

 フランスにはマスクを付ける文化はなかったのだ。微笑み、眉を動かす、顔をしかめるー豊かな表情すべてが大事なコミュニケーションの道具だったのだ。

 3月、私がマスクを着けているとき、恐怖を感じた顔で後ずさりする人がいたのは、マスクは感染の象徴だと思っていたからだと思う。

 3月までは、フランスの路上で、マスクを着けている人が「顔を隠すのは法律違反」と言って罰金を取られる偽警官による詐欺もあっていた。そういう犯罪を思いつくくらい、一般的に顔・表情を隠し、隠されることに胡散臭さや恐怖を感じるフランス人が多いということではないだろうか。

 さらにマスクをしたままだと話しにくい。声も聞こえづらい。長時間だと疲れる。

 フランス国籍ユダヤ人哲学者エマニュエル・レヴィナス(1906 ー1995)は、「他者」の「顔」と対面することこそが重要であると主張、「顔」は人を殺すことを不可能にするーと言った。
 
 5月11日以降パリの公共の場所はどう変わるのだろうか。ビズとハグはしていけない。さらにマスクを必ずするー。その変化はコミュニケーションを複雑にし、人を不安にさせるものだろう。マスクをプレゼントした私は、不安に鈍感だったのだ。



参照記事
https://newsphere.jp/national/20200312-2/