パリ徒然草

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三島由紀夫と私 「豊饒の海 第三巻 暁の寺」を読んで① 

 三島由紀夫の「豊饒の海•第三巻 暁の寺」を再読した。


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 三島由紀夫の著作は、私が自分の生涯で一番読んだ作家で、それは、私が20歳ころまでのことだった。20歳までに親からもらったお小遣いから三島由紀夫だけで、40冊くらい自分で買って読んだ。高校生ころの私の本棚は新潮文庫の背表紙のオレンジ色だった。

 

 その頃に、「豊饒の海」シリーズだけは、もっと、年を取って読もうと感じた。だから、この4部作は、海を越えてフランスに今ある。


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三島由紀夫についても書かれたフランスの情報紙】

 

 三島由紀夫はフランスでも、翻訳され読まれていて、二ヶ月ほど前、フランスのランスという町の図書館に行ったとき、文学等を紹介する情報紙「le Chat Murr」が置かれていて、その中でも三島由紀夫についてフランス語で書かれていた。去年没後50年だったことも、関係しているのかもしれない。

 

 夫によると「暁の寺」は、「豊饒の海」シリーズの第1巻、第2巻に比べて、フランスでは、文学として、小説として、評価されていないのだと言う。日本人の評論家でも、そういった類のことを言うのを聞いたことがある。それに影響されたのか、夫は1,2巻は読んだが、3巻の途中で挫折したらしい。

 

 「豊饒の海」とネット検索をかけて調べると、たくさんの記事やブログ、大学の論文に当たった。必ずしもプロが書いた文章が私の心に響くわけでなく、個人のブログでも十分に読み応えのあるものがあった。

 

 例えば、下のはてなブログ実によく書けている。これ以上、私が付け足すものもないというくらい良くまとまっている。

 

https://moonmadness.hateblo.jp/entry/2019/04/18/114529

 

解説としては、これ(↓)も凄い。外国の他の作品と比べて分析している。他のたくさんの作品を読んでいるから書けるのであって、こんな解説は私には、書けそうもない。

 

https://note.com/fufufufujitani/n/n8389a1785169

 

 

 また、一方では、政治的アプローチからも論じられて来た。去年撮影された、この討論の中にも、「豊饒の海」が出てくる。

 

 

桜チャンネル 討論 没後50年三島由紀夫が予期した日本は今

https://youtu.be/Put4J9KkyXw

 

 そんな大作に対して、私が何か書けるだろうか。

 

 さらに、私はそれだけ三島由紀夫を読んでいながら、一回も学校の感想文にすら、書いたことがなかった。

 

 三島由紀夫の作品は、中学生や高校生の私にとって、完成されていて、だからこそ閉じられた小説世界(虚構の世界)だった。当時から、三島由紀夫の観念の世界だと思って読んでいた。私は、三島由紀夫の観念世界の中で、安心して物語の世界に入って行けた。

 

 語彙が豊富なたくさんの比喩を用いた描写を味わうこと、その時間そのものがとても贅沢で、他では得がたいもので、この幸福は自分だけの時間にしておこうと思っていた。読むことで完結していて、そこに私の言葉を加える必要などない、おこがましいと思っていたのだ。

 

 同世代の人にとって熱狂するものはテレビドラマだったり、漫画だったり、アニメだったりしていた。当時私の家庭では漫画を読むのは禁止で、テレビも家に1台しかなく、見たい番組を選ぶことができなかった。本は自分の興味に沿って選ぶことができる数少ないものだった。

 

 そして、当時「豊饒の海」は、私にはまだ、理解できない部分がたくさんあると思わせた。安心して物語の世界、豊潤な語彙の海の中で、ただ、たゆたっていれば良い、と思えなかった。一方、分からなさが魅力でも、あった。この本はもっと年を取って、成長して、分かるようになって、また読みたい、とずっと、思っていた。三島由紀夫の自決した45歳頃になって、と思っていたかもしれない。

 

 「豊饒の海 第一巻 春の雪」は、当時でも、すんなり読めた。美しい作品だった、という強い印象がある。そして第2巻以降の記憶は靄がかかったようにあまり思い出せない。

 

 輪廻転生や仏教思想が難し過ぎたのかな。それは、あると思う。今、読んでも良く理解していない。

 

 さて、そんな大作に対して、私が何か書けるだろうか、の答えだが、まあ、そう身構えなければいいのかもしれない。三島由紀夫を論じるなどと思っていては何も書けない。

 

 自分について書いていることになる、自分の日記なのだから、まとまらなくてもいい、今、自分が思ったことを書き散らかそう。これは評論や分析、解説、紹介文ではない。とても個人的な感想文である。同時に今日、何を感じたか考えたかの日記である。

 

ひろゆきさんがYou Tubeで感想文の書き方を述べていて、それを聞いたことが私の気持ちを気楽にしてくれた。 )

 

豊饒の海」の紹介はウィキペディアでどうぞ

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%8A%E9%A5%92%E3%81%AE%E6%B5%B7