パリ徒然草

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義父のお墓参り

 夏休みの宿題を終えていない子供のように、お盆のお墓参りができていないことが気がかりだった。昨夜はついに亡くなった人が夢に出てきた。

 

 2019年の夏には日本に帰国して、お墓参りできていた。帰国できていないのは、新型コロナのせいでもある。

 

 そうだ。サルトルの墓、ジム・モリソンの墓など、パリの有名人の墓に観光に行くのではなく、夫の家族のお墓にお祈りに行けばいいのではないか。

 

 だが、夫は自分の父親の墓に一度も、行ったことがないのである。義父と言っても、私が生まれる前に、すなわち、夫が幼い頃に亡くなっている。

 

 そして、夫は、人生で一度も、父親の墓参りしていないことを恥ずかしいとも、悲惨だとも、義務を果たしていないとも思っていなかった。お墓に全く執着していなかった。それでも、私が提案すると「ちょうど良い機会」と言ってくれた。

 

 

 夫は数日前、義母にお墓の場所を電話で聞いた。それはパリ郊外にあった。

 

 

 ということで、義父のお墓参りに夫と一緒に行った。

 

 地下鉄とバスを乗り継いだ。バスを降りてしばらく歩いた。私は、日本の実家の習慣で、花、水、線香、ろうそく、ライターを持っていた。こちらの人は、持っていっても花だけのような気がする。

 

 フランスのお墓は市町村が管理している。

 


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 長い長い塀に囲まれた墓地は、広い平地で、いくつもの墓が並んでいた。墓地に入ると、左手に事務所があって、常駐している人が一人いた。夫は、その人に、義父の名前を告げて、場所を調べてもらった。地図を指さしながら、その人は親切に場所を教えてくれた。

 

 衛生パスポートもいらなかったし、身分証も要求されなかった。フランスの墓は、公共のものなので誰でもお墓に行っていいのだそうである。だから、有名人のお墓が観光地と化したりもするのだ。

 

 教えてくれた場所を目指して、お墓を探した。広大な墓地には私たちしかいなかった。夫も、一度も来たことのない場所だったが、教えていただいた情報のおかげで、お墓は容易に見つかった。フランスの優れた公共サービス、恐れ入ったと、思った。

 

 大きな石に十字架の浮き彫りになっていて、名前が数人彫ってあった。前方が花壇になっている。それ以外に飾りはない。夫は、そこに書かれている人の名前全員をメモした。

 

 夫に尋ねると、ここに眠っている人は、全員土葬ということだった。

 

 フランスは、伝統的に土葬の国だ。カトリックでは火葬が禁止されていたが、1963年の第2バチカン公会議で、火葬は「復活」や「魂の不滅」などのカトリックの教義に違反しないと判断されて許可されたこともあって、近年では、火葬も増えている。


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 自治体が管理していることもあって、墓地は綺麗に整えられていた。訪れた人が掃除する習慣はないという。日本のお墓のように、掃除するほどの場所もない。私は、花壇に水をあげ、花を飾り、線香を焚いて(本来は線香を焚く習慣はフランスにはない)、手を合わせた。

 

 


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