パリ徒然草

パリでの暮らし、日本のニュース、時々旅行、アート好き

無意識の中にある記憶 インナーチャイルドを癒そう

今週のお題「忘れたいこと」

f:id:clairefr:20211220075032j:plain

 「インナーチャイルドを癒そう」という誘導瞑想のYou Tube動画にハマっている。今年私が出会ったYou Tubeの神動画の一つだと思う。既に2日に1回はこれを聞いて実践していて1ヶ月が過ぎた。

インナーチャイルドの癒し」 辻燿子さん
https://youtu.be/wISDE5ROUWw

 この動画通りに、息をゆっくり吐く。目を瞑る。そして、毎回、ドアをイメージし、そのドアを開ける。ドアの向こうに、一人だけぽつんと女の子がいる。

f:id:clairefr:20211220075508j:plain


 毎回女の子の年齢は違っていて4歳、5歳、6歳、7歳、8歳の私が出てきた。日本での自分の子供時代である。(私はこれをやる前は自分は、12歳くらいが一番傷ついていると思っていたのが、違っていたのかもしれない)

 
 最初の何回かはこの動画で瞑想して、毎回、泣いた。号泣した。あまりに毎回気持ち良く泣けるので驚いた。


 私は10歳くらいから人前で泣いたことがないから、これを読んだ私の知り合いたちは驚くかもしれない。


 そして、いろんなことを思い出した。


 4歳か5歳のとき、隣に住む男の子が母親に虐待される行為につきあわされ、見ていなければいけなかったこと。

 5歳くらいのとき、母が拭きそうじをしながら、不満や愚痴を言い続けていたこと。その年齢から私は母の不満の聞き役では、あったが、母は私の問題を抱える余裕がなさそうだと思って生きてきた気がする。

 7歳のとき、同じクラスの子が病気で亡くなって、弔事を読んだこと。

 7歳のとき、女の子と遊んでいたら、女の子が知らない男性と一緒にいなくなり、大人と一緒に藪の中を探したこと。

 8歳のころ、叔母と二人の小さな娘たちと原っぱで野いちごを摘んだ。母からそれから間もなく、そのおばは、白血病で亡くなったと聞いた。


 私の脳には断片のシーンだけが残っている。まるで昨日のことのようにびっくりするくらい鮮明に、リアルに、はっきりとシーンが蘇る。

 例えば、母親に批判され暴力を振るわれる男の子の弱々しい表情や、私が弔事を読む際の、私の耳にこびりついた、大人たちのすすり泣きの声や、蒼白になった大人と一緒に女の子を探しているときの藪の風景や光の中で透き通るように美しかったおばや…。


 20歳の自分が出てくることも、一度だけあった。自分が女性であることの居心地の悪さを思い出した。痴漢によく遭っていたころだ。

f:id:clairefr:20211220075837j:plain

 脳は、忘れたいことを上手に忘れてくれていると思う。そうでなければ生きていけないからだ。でも本当は完璧には忘れていない。無意識の領域に保存されている。そして、何かのきっかけで私の心の傷に触ったとき、ざわざわする。


 フランスの小説家マルセル・プルーストの小説に出てくる主人公が、マドレーヌを浸した紅茶の香りから幼少時代の記憶が蘇る。この描写になぞらえ、特定の香りを嗅ぐことで、その香りに結びついている記憶が呼び起こされる現象を「プルースト効果」と呼ぶそうだ。


 香りだけではなく、文字情報も幼少期の記憶を呼び覚ます。MeeTooムーブメントの流れなのか、未成年レイプなどの報道を見かける。カトリックでも、フランススポーツ界でも未成年性虐待の話題をときどき目にする。最近だと、フランスの水泳五輪チャンピオンの未成年レイプ疑惑に関する記事を目にしたとき、ふいにざわざわしたりした。

 私が何度もエプスタイン事件にこだわって書いてしまったのも、無意識的なもので、隠されたこれらの記憶のせいだったのかも、しれない、と今、思う。

f:id:clairefr:20211220080023j:plain

 私は子供の私を抱きしめた。せめてそういうことがあったのだ、と私だけは分かっていてあげようと思った。

 あのころ、私は自分に起きたことではなかったことでも傷ついていたのだ。泣いたりもせず、淡々と受け入れて生きていた。しばしば、無表情で喜怒哀楽の表現のない子供と言われた。

 例えば、7歳の私は淡々と弔事を読んだ。たくさんの大人たちの中で。皆と同じように泣けていないことに戸惑いながら、申し訳ないと思いながら。

 つらかったね。
 嫌だったね。
 怖かったね。

 世界中の人がなんと言おうと私だけは私の心の声を聞いてあげよう。忘れる代わりに認めよう。

 そして、無意識に支配されることから抜け出そう。
 f:id:clairefr:20211220080131j:plain
(本文と写真は特に関係ありません)