パリ徒然草

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オルセー美術館という作品 14日夜ナイト•ミュージアム


オルセー美術館5階の窓から】

 昨日14日はナイト•ミュージアム(Nuit européenne des musées)の日で、パリでも、多くの美術館が夕方以降、無料で入場できた。

 新型コロナ以前、私はこの日に深夜12時過ぎまで企画展に2つ3つ行っていた。通常、フランスでは、第一日曜日に多くの公共美術館が無料になるが、企画展は含まれないことが多い(企画展も無料で見れるのはオルセー、オランジュリー、ピカソ美術館の3つしか知らない)。そんな中、ナイト・ミュージアムのこの日ばかりは企画展も無料で見れてしまうので、リュクサンブール美術館の企画展やグラン・パレの企画展に行ったものだった。


オルセー美術館の企画展ガウディ展より】

 グラン・パレで数年前にあったヴィル•ヴィオラ展も深夜に無料で見たが、その日3つ目の企画展という疲れが飛ぶほど、強烈に印象に残った。素晴らしかった。リュクサンブール美術館のミュシャ展も無料で見学させていただいた。


オルセー美術館の企画展マイヨール展より】

 だが、コロナ以降は私と美術館の距離も変わってしまったように思う。この約2年間、新型コロナの影響で美術館が閉まっていた時期もあるし、ワクチン非接種者であるために、行きたくても入館できない時期もあった。

 新型コロナは全く嘘とも思っていない(洗脳が溶けていないのかも、だが)のかもしれない。無料の日の人気の企画展は人が多いのが常で、あんな大勢の人々に近づく必要もないだろう、という気分になった。


 今回はオルセー美術館だけ行った。オルセー美術館であれば、第一日曜日の無料の日も入場できるが、長い行列ができ、入館まで長い時間待つことが多い。ナイト•ミュージアムの昨日は、夕方7時頃に行って列の人数は10数人程度。5ー10分待って入場できた。

 オルセー美術館では5つ企画展があっていて、それをすべて無料で見ることができた。私は中でも、現代美術家のソフィ・カルさんの企画展が見たかった。この企画展の詳細についてはまた別の機会に書く予定だが、ソフィ・カルさんの企画展は私のものの見方に深く影響を与えた。


【誰もいなくなった夜の美術館内のレストラン】

 美術館の建物そのものが、いや、その時間のその一瞬そのものが作品に思えてきた。オルセー美術館の建物はもともと1900年のパリ万国博覧会開催に合わせて、オルレアン鉄道によって建設されたオルセー駅の鉄道駅舎兼ホテルだった。今この瞬間の夜の美術館のレストラン、回廊。歴史を経てここにあって、そして、今の一瞬も歴史の一コマになる。


 夜が深まるにつれ、美術館も人が増えてきて、特に若者が増えてきて、人で混み合う5階の印象派コーナーには行かなかった。

 人のいない静かなスペースが好きだ。いかにも美術鑑賞している気分になれる。

 例えばいつも人が多くない2階のアール・ヌーヴォーのコーナー。前回来たときと展示は少し変わっている。高い丸天井の内装の中で、ガラス張りの壁から差し込む光の中で、ヴィクトール・オルタやエクトール・ギマールらの家具や扉が凄くカッコよく見えた。1900年のパリ万国博覧会開催に合わせて建てられた建物とアール・ヌーヴォーのデザインがマッチしている。

 



 夜のオルセー美術館。いや朝であっても昼であっても、美術館自体が作品なのだ。日が暮れていくパリの中でオルセー美術館という作品の美しさを発見した。

 

(ちなみに、フランスでは美術館内のマスク着用は義務ではなく、多くの人々はもうマスクを着けていない。明日から公共交通機関のマスク着用義務も撤廃される)