ル・アーブルはセーヌ川河口のフランス屈指の規模を誇る港湾都市。ただ海を見るだけではもったいない。“観光”というより、非日常に身を置く喜び。パリから遠く離れて、“旅“した気分になれました。
1.サン•ジョゼフ教会
20世紀建築の傑作の一つ。107メートルの高さでル・アーブルの街のシンボル。1951年着工1964年献堂。
1945年からのオーギュスト•ペレによる再建計画の一環とも言えるのだが、中に入ると、ステンドグラスが美しい。ステンドグラス制作は、マルグリット・ユレが手がけた。ナビ派の画家、モーリス・ドニがペレに紹介したのだという。
使われているガラスは合計12,768枚。7色を基本に50のニュアンスがあるガラスの幾何学的配置。ユレは息を吹きかけて作る古いガラスを使用した。太陽の動きによって、季節によってガラスは違った表情を見せる。コンクリートに光が反射し、幻想的世界を作り出している。天気の良い冬の日の教会内部は美しかった。まるで万華鏡のよう。
【外観】
使われている色は東西南北で異なる。東はキリストの誕生の色を表す紫と緑。南は神の栄光の色でゴールドやオレンジ。西は、行動と力の色であるピンクと赤。そして北は非物質を表し、空や処女性を象徴しているブルー。
(教会にあった仏語のパンフレット参照)
2,ル・アーブル港
印象派という言葉の語源にもなったと言われるクロード・モネの作品「印象、日の出」(パリ、マルモッタン•モネ美術館所蔵)は、このル・アーブル港を描いたものだ。どこで描いたかは、海岸にパネルがあったりして、いろんな説があるらしいのだが、数年前のBS放送の美術史家によると、もしかしたら、滞在したアパートと続いている建物から描いたのかもしれない。
アパートのベランダから撮影した港の写真が私の宝物になった。イギリス行きのフェリー、貨物船、小型の船、たくさんの船が行き交う。
3,ル・アーブルのビーチ
私はこの海を見ていたら、「北の海」という中原中也の詩を思い出し、
「海にいるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にいるのは、
あれは、浪(なみ)ばかり。」
と詩を暗唱し、一生懸命フランス語に訳したのだが夫に、「暗い詩だね」と言われてしまった。この詩の続きに「呪い」という言葉があるもんね。今日の海はあまり波がなくて、穏やか。
寒すぎて空の色まで見ていなかったが、帰ってきて、写真で見ると、空が詩的。だから急に詩を読みたくなったのか。
冬のビーチは寒すぎて長く滞在できなかった。夏に行くと、もっと違う感想になると思う。
4,オーギュスト•ペレの建築群
第二次世界大戦中、廃墟と化したル・アーブル。1945年からオーギュスト・ペレが135haを再建に取り組んだ。2005年ユネスコ世界遺産に登録された。鉄筋コンクリートで出来た市庁舎、集合住宅など直方体の建物が整然と並んでいる。
夫が「きれいじゃない」などと言うので、写真があまりない。だが、凄いことに気づいた。もしかしたら、泊まったアパート、あれも、再建計画の一環の建物なのでは? 滞在中は、思いもしなかった。パリの建物よりも新しいためか、快適な滞在だった。部屋の天井が高かった。
5,アンドレ・マルロー美術館
残念ながら新型コロナのため現在は閉館中。印象派絵画を多く所蔵する美術館。海の見える場所に建っている。
【美術館の前にある作品。その前は海】
6,空中庭園(jardin supendu)から見下ろすル・アーブルの街
ビーチから徒歩で登り坂を約20分。
ゆっくり見学する時間はなかったが、植物園や温室、軍事要塞跡もあった。
7,オスカー・ニーマイヤーの文化センター
ブラジル人の世界的建築家オスカー・ニーマイヤーが建設した火山(ル・ヴォルカン)と呼ばれる文化センター。市から依頼があったのは1972年で、完成したのは1982年。中には入らなかったが、曲線がユニークでつい写真を撮りたくなる。
8,夜のライトアップ
夜のライトアップも、パリとは全く違う趣きがあって楽しかった。