パリ徒然草

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「ドライブ・マイ・カー」 脚本賞おめでとう

   嬉しいニュースがある。カンヌ映画祭授賞式が17日(日本時間18日)、フランスで開かれ「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督が大江崇允氏とともに脚本賞を受賞した。

 

 「ドライブ・マイ・カー」は、作家、村上春樹氏の短編集「女のいない男たち」(文藝春秋、2014年)に収録された作品。この本、はるばる日本から持ってきて今も私の手元にある。


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 カンヌ映画祭期間中、小説と同じタイトルの映画が出品されていることを知って、賞取れるといいなあ、と思いながら、この短編小説を読み返していた。映画祭中、約3時間の上映後、会場は大きな拍手に包まれたーという記事を読み、私も期待していた。そんな中の嬉しいニュース。

 

 あらすじは、こんな感じだ。主人公「家福」は俳優で、台詞の練習をするため車を運転して仕事場まで行っている。接触事故を起こし、運転免許停止となり、運転手として地味な若い女性を雇う。家福は助手席に座っていると、家福が49歳のとき亡くなった美しい妻のことをよく考えた。そして寡黙なドライバーに打ち明け話をする。•••女優の妻は時折、彼以外の複数の男と寝ていた。家福は妻亡き後、約10年前、妻が性的関係を持っていた男性のうちの一人、高槻という俳優と飲み友達になる....。

 

 小説を読むと、勝手に登場人物がイメージされることがあって、予告編を見て、申し訳ないのだが、あー、主人公がイメージと全然違ったーとなった。

 

予告編

https://youtu.be/rpjzaZn4_V0

 

 映画では、西島秀俊氏が演じるのだが、イケメン過ぎる。小説では、性格俳優とあるし、「髪は若いうちからもう薄くなり始めていた」という描写がある。私の中で、主人公と同じ年頃の緒形拳のイメージだった。今だと誰だろう? 

 

 何より主人公の名前が「家福」で、勝手に少しふくよかなイメージがあった。昔一緒に働いたことのある男性で、「福」がつく男性がいて、私はなぜか、その男性が勝手に、頭の中にちらついた。だから、「顔はいささか細長すぎる」という描写があるのに、その描写は完全に無視して想像しながら読んでいた。

 

 「家福」と小説、活字で読むと、名字の漢字が頭に何度も、残る。一方で映画だったら「カフク」という音が何度も、聞こえるのだろうか。漢字と音、イメージ違うなあ。私が「カフク」と発音していたら、夫が「カフカに聞こえる」と言った。

 

 はあ、あの不条理小説の作家の? まあ、確かに不条理な話では、ある。同じ「音」でも、受け取り方全然違うなあ。(ちなみに亡くなった妻の名前は「音」である)

 

 小説と映画って、だから、印象違うんだろうな。

 

 小説は51ページ。こんな短い話がなぜ映画179分になるのか。脚本賞受賞ということで、そこが気になる。

 

 受賞した際のニュース記事に『短編集「女のいない男たち」に同作とともに収められた「シェエラザード」「木野」も投影した』と書いてあって、なるほどなあ、と納得した。他の短編の話とつなげて、登場人物たちの心理が膨らませて描かれているのだろう。予告編を見ると、サスペンスっぽい。

 

 小説を読んでいるからこそ、脚本の良さを楽しめるかもしれない。日本では8月20日公開。

 

 

短編「木野」について感想文を私が書いたブログ

https://clairefr.hatenadiary.com/entry/2021/04/13/071733

 

映画「ドライブ・マイ・カー」の公式映画サイト

https://dmc.bitters.co.jp/