パリ。ある日、友人と別れて、日本食レストランがあり、日本食材のスーパーがある、オペラ界隈をふらふらと一人歩いていた。
ふと、お好み焼きのメニューに目が止まった。フランスの地方都市アンジェを旅行したとき、食べようと思って、チルチルミチルが青い鳥を探したように、探して、探して、得られなかった「お好み焼き」。パリだと、なんだ、ここにあるじゃないの。あの寓話のように、「青い鳥」はすぐそばにあったのだ。
今、この店に入れば、すぐ食べれるじゃないの?ときは午後6時前。混んでないし、すぐ入れる。お店の名はレストランAKI。
ここで、子供の頃から染み付いた感覚が邪魔した。今日は夫が家にいる。「主婦」はこの時間に夕食を作って、夫とともに、ご飯を食べるべきだ。自分一人で、お好み焼きを食べるなんて...。
ちなみに、このブログ、900記事以上書いたのだが、私は一度も自分を「主婦」と定義したことはない。私は外で働いてきたし、職がないときも、求職活動してきたし、「無職」だったことはあっても、「専業主婦」と自分を思ったことはない。
まあ、いいか。私は「主婦」じゃない。私は誰かの奴隷でもないし、したいことをして、したいように生きていいのだ。
昭和世代だけが、たかが、レストランに入るのに、こんな逡巡を頭の中で繰り返し、脳を疲れさせているのかもしれなかった。
私はレストランAKIに入った。カウンターに通された。お好み焼きを注文した。
しばらくすると、私の隣に西洋人のイケメンの背の高い、若い男性が座った。カツカレーを注文していた。
念願のお好み焼き。10年以上パリに住んで、パリのレストランで初めて食べた。
パリで自分でお好み焼きを作ったことは何度もある。家にはこのレストランが使っていない「青のり」まである。
でも、レストランで食べるのは、日本円に換算すると、高すぎると思って食べなかった気がする。いやいや、これで、2000円くらいしても、ここ、パリ中心部だし、近くにあのオペラだし、鰹節こんなに載ってるし、全然高くないだろ。誰かが作ってくれて、サービスしてくれるって、ありがたい。
美味しかった。パリでは、他にもお好み焼きを食べられるレストランあるようなので、いろいろ食べてみようかな。パリはフランス一、日本食レストランの選択肢がある街だろう。
そして、私はこの日のお昼は自分で作ったお弁当だった。空になったお弁当箱があったので、弁当箱に、このお好み焼きを少し入れて、持ち帰り、夫にも分けた。さらに、その後、夫だけのために夕食も作り...。
いやいや、私は「主婦」じゃない!