パリ徒然草

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ホームレスの命はどうでもいい発言への反論 無料公開の記録映画を見た

 ホームレスの命はどうでもいいー。有名ユーチューバーがYouTubeチャンネルで動画配信したホームレス状態の人や生活保護利用者への差別発言が10日以上前から気になっていた。このような発言が日本社会の中で、市民権を持たないことを祈っている。こうした言葉への反論の意味を込めて、2本の映画がYouTubeにおいて期間限定で無料公開されている。その一本、飯田基晴監督の「あしがらさん」を見た。撮影した監督の温かさとあしがらさんの愛らしさが伝わる良いドキュメンタリーだった。

 

 

 無料公開されているのは、ドキュメンタリー映画「あしがらさん」

https://youtu.be/euXpt3bwAq8

8月31日まで無料公開。

 

 新宿の路上で20年以上暮らし、「あしがらさん」と呼ばれた60代男性が、監督との交流によって居場所を見つけていく3年間を記録した映画。2002年制作。

 あしがらさんは当初、心を閉ざしていたが、入院先で飯田監督の見舞いを受けたり、入浴を手伝ってもらったりする中で、次第に心を開き、笑顔を取り戻していく。

 あしがらさんが監督に「あなただけは信じる」と言うシーン。撮影者でもある監督が「撮らせてもらっていることがいただきものです」というシーン。目頭が熱くなった。

 

 路上生活のせいで最初は汚れて見えていたあしがらさん。後半、身なりも整った、あしがらさんの本名は、「神保」さんと明かされる。その笑顔を見て、踊っている姿を見て、神様のような人だったのだなあ、と思った。私にとってはこの映画を通して、あしがらさんや援助した人たちに出会うことができたことがいただきもの、だと思った。日本も捨てたものじゃないな、と思えた。

 

 見終わった後、調べたら、あしがらさんは2016年6月に亡くなっていた。

 


 有名ユーチューバーは8月7日公開の動画で、「ホームレスの命はどうでもいい」「いないほうがよくない?」「じゃまだしさ、プラスになんないしさ、くさいしさ、治安悪くなるしさ」などの差別発言を繰り返していた。こういった発言を聞くことは、同じ日本人として地球人として、悲しくなる。2020年11月に東京渋谷で起きた60代の女性が男に突然殴られ、死亡した事件など、ホームレスへの暴力、殴打事件、殺傷事件などが後をたたないと知っているから尚さらである。

 

 

ひとり、都会のバス停で~彼女の死が問いかけるもの(東京渋谷での事件)

NHKのサイトより

https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/kishanote/kishanote15/

 

 一方で、優生思想的な発言に対して、それを言った人を批判しても、何か虚しかった。

飯田監督は反論として、この映画を無料公開した。言葉に対して言葉で反論するのではなく、あしがらさんの「存在」が反論だ。あしがらさんと監督の温かい交流が反論だ。グループホーム代表の後藤さんを始め、穏やかに辛抱強く相手と接し丁寧に対応する若い人たちの姿が反論だ。ドキュメンタリー映像の力強さを感じた。

 

 同じ趣旨で、子どもたち向けの教材として撮影された映画「『ホームレス』と出会う子どもたち」https://youtu.be/g4J4sm3BkLI も公開されている。9月30日まで。