パリ徒然草

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映画「シンプルな情熱(passion simple)」を鑑賞

 昨年の9月以降私は、ある男性を待つこと以外何ひとつしなくなったー。予告編のフレーズに惹かれて、映画「シンプルな情熱(passion simple)」を鑑賞した。

 

一部本編映像と予告編

https://youtu.be/9c_oCwc6xxY

 

 2020年のカンヌ映画祭出品作品。日本では今年7月に既に公開。フランスでは、8月11日から公開されていた。

 

 午前中、一人で映画館に鑑賞に行ったら、鑑賞者が私と見知らぬ男性の二人きりだった。50席ある映画館で、後から来た男性は私のすぐ後ろに座った。新型コロナで映画鑑賞中もマスクをし続けなければいけない。少し離れた場所に座ってくれれば、こっそりマスク外していいのになあ。

 

 映画はパリの大学で文学を教えるエレーヌ(レティシア・ドッシュ)がロシア大使館に務める年下で既婚者のアレクサンドル(セルゲイ・ポルーニン)を待ち焦がれる姿とやっと来てくれたと身体を重ねる姿が続く。映画は日本では18歳未満鑑賞禁止。前半、ラブシーンが予想以上にたくさん出てきて、こういうの期待して見に来たわけじゃないんだけど、とドキドキする羽目になった。

 

 セルゲイ・ポルーニンの肉体美が素晴らしいと褒め称えている女性が多いようなのだが、もともとバレエダンサーで初めての演技と思えない、その存在感や演技を高く評価するものの、彼の裸を見続けるのが幸せー!と私には、思えなかった。身体にタトゥーがたくさんあるのも苦手だった。ファンの方、すみません~。完全に私の好みの問題である。

 

 最後まで見終わると、やっぱり見て良かった。最初の方の激しいシーンもやはり意味があった。主演のレティシア• ドッシュが良かった。表情が素晴らしい。女性の心理が細やかに描かれている。恋する気持ちが伝わった。The Flying Picketsのonly youをはじめ音楽の使い方も好みだった。

 

 例えば、彼女は恋に破れて、彼と同じ空気に触れたくてモスクワに数時間だけ行く。その時のことを精神科医に「良かったか」と尋ねられて「ええ」と満面の笑みで答えるその表情。とても可愛らしい。

 

 パリのファッションを見るのも楽しい。ヒロインのワードローブ、素晴らしかった。彼が来る前にヒロインが鏡に自分を写してをいろんな服を当てながら真剣に選ぶシーンも好き。最後までエンドロールを見て、ヒロインの黒の下着、ラ ペルラ(LA PERLA)だろうな、と想像するのも楽しかった。

 

 相手は既婚者で、ヒロインには、小さな息子がいるという設定なので、日本だとヒロイン以外に感情移入して、ヒロインを批判する人も、多いと思う。でも恋とは、こういうものなのだ。何歳になっても。

 

 監督はレバノン出身、フランス育ちのダニエル・アービッド監督。女性の監督だからこそ、女性の心理をよく描けていたと思う。原作はオートフィクションのフランスの作家、アニー•エルノーさん。

 

 私はこの本、現在、フランス語で読んでいる途中。

 映画館に行かなくてもパリに住んでいるのだけれど、映画の中のパリは現実のパリとは違うのだ。パリにいるのに、別の世界のパリを見に行く贅沢を味わった。