お正月にだけある特別な物に、おせち料理がある。日本ではおせち料理はお店に注文し配達してもらう人も、多いよう。
フランス人の夫は、おせち料理に入っている多くの物が好きではない。だから、注文するほどでも、私自身が自分でたくさん作るほどでもない。けれど、やっぱり自分自身がおせち料理風なものを少しだけでも、食べたい。
去年秋に一時帰国したので、豆類、昆布巻きなどは買ってきた。紅白なますと卵焼きを作った。日本食材店でかまぼこは購入せず、フランスのスーパーで買うSURIMI(カニカマのようなもの)を添えた。
夫は餅を食べない。それでも、私は雑煮を作る。餅を食べないヨーロッパ人は多いようで、日独カップルや日仏カップルの奥さまがツイッター等で夫が食べないので、雑煮を作らないと言っていた。ヨーロッパで買う餅の価格が高すぎる、と言っている人もいた。
私はパリの京子食品で餅を買っている(日本では買ってこなかった)。美味しい餅だし、妥当な値段だとありがたく買っている。
私は夫には、餅が入っていないスープだけをサービスする。しいたけ、白菜、ネギ、カニカマのすまし汁のようなものである。元旦に包丁を使うなという迷信があるようで、野菜を手でちぎって雑煮を作った。
それから夫は黒豆、白豆も食べない。私だけが食べている。黒豆は邪気払い、昆布巻きは「喜ぶ」で発展運など、おせち料理は一つひとつの食べ物にも開運の意味のあるおめでたい食べ物らしいが、夫の目には私の個人的趣味で食べる物に見えていることだろう。
今年は、11月に実家に帰ったとき、筑前煮を作ったので、煮物を作る気が起きなかった。パリの京子食品に行けば、れんこんも里芋も、ごぼうもこんにゃくも調達できる(パリのあちこちでそれらが手に入るわけではない)。だけど、そもそも、その煮物を喜んで食べるのは、私だけなのだ。
【去年11月後半に日本で作った筑前煮】
お節料理風を準備したときは夫の食事をどうするのか、という問題が出てくる。去年日本に、帰ったとき買った、日本製のレトルトカレーやレトルトシチューがあった。これを温めた。
1月2日夜はマグレドカナール(magret de canard)を焼いた。ネットで調べるとマグレドカナールは、ファオグラを採取したミュラー種の鴨のみが名付ける事が許される世界最高峰の鴨胸肉の名称。 最高峰にふさわしい肉汁と、濃厚な味、脂身が特徴的ーと書いてあるが、近くのスーパーでも、肉屋でも簡単に買える。れんこん、ごぼう、里芋よりもずっと身近な存在なのである。1㌔グラム当たり26ユーロ程度で牛肉より安い。(そうは言っても、京子食品で買った360グラムの丸餅よりはマグレドカナール330グラム8.55ユーロの方が高い)
やっぱり夫が喜ぶのはこうしたフレンチなのだ。表情で分かってしまう。日本のお節料理にも、鴨が入っていることがあるので、私にとっても丁度良い。
年の始めのマグレドカナールは恒例になりつつある。
そして、BIOで買ったこの時期のオレンジの美味しさよ。鴨のオレンジソース。その鮮やかなオレンジ色と言い、祝い事っぽくて良いではないか。