パリ徒然草

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ラコストのサドの城 私の頭の中はリュベロンでいっぱい

 5月22日。パリは、急に雨が降り出したりの不安定なお天気だ。夫も寒い、寒い、とせっかく数日前から再開したカフェやレストランのテラス席に行くのを嫌がった。新型コロナウイルスの影響で、カフェもレストランもテラス席だけが営業可能なのだ。
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 私は、3日前にリュベロンで自分で撮影した写真を眺めている。

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 ボニューで撮った写真、あまり、いいのがないなあ。
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 上の5枚の写真は5月19日、ボニューでの写真。写真には、映らないが、ボニューは風が強かった。ミストラルというほどではないのだろうが、木が唸り、軽い物は何でも、飛ばされそうで、慣れない私には、怖いくらいだった。体に力が入った。比較的風の穏やかな場所では写真を撮ったが、風の強い場所には、長く滞在しなかった。
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 上の写真のレストランのテラス席(ボニュー)で、食事した後、徒歩でラコストまで行った。

 さらっと書いたが、夫と共にレストランで食事するのは昨年8月末以来、9カ月ぶり。一人でレストランで食事したこともあったので、私がレストランで食事するのは、昨年10月末以来、7カ月ぶりのことだった(日記で確認)。新型コロナウイルスの影響で、7ヶ月間、フランスではレストランが閉まっていたせいである。

https://clairefr.hatenadiary.com/entry/2020/09/01/052337


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 ボニューからラコストまでの途中の景色が素晴らしかった。


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 さくらんぼの木。
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 歩く途中のリュベロンの大自然。なんて、美しいんだー。
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 遠くにラコストが見える。

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 上の写真の遠くの頂に雪が残っているのが見えるだろうか。あれがヴァントゥー山である。


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 実はこの辺りで少し迷った。ラコストはずっと、見えているのだが、迷ってしまう箇所があった。田舎の獣道は所有者が変わって道が私有地になり立ち入れなくなることもある。そういうわけなので、このブログには、道案内は書き残していない。

 

 人とは、誰一人すれ違わず(遠くで農作業や工事の人はいた)、車とも1台しかすれ違わなかった。自力で何とかするしかない道である。

 

 googlemapの助けも借りた。迷うとパニックになってしまう私…。さらに、水が、湧き出ていて、ぬかるみになっている箇所もあった。こんな冒険は、若いうちじゃないと、できないこと、だと思う。


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 ラコストがどんどん近づいてくる。
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 後ろを振り返ると、1時間前までいたボニューが小さくなって見えた。


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【遠くに見えるボニュー】

 

 後半は分かりやすい道があり、だんだん登り坂になる。

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 ラコストへの坂を登りながら、作家で翻訳家の澁澤龍彦を想った。ラコストに来た澁澤が「どこへ行っても草を摘む気になれないが、ここでは夢中になって草を摘んだ」というフレーズを書き残したことを想った。

 ラコストへの旅、澁澤龍彦について考える機会がなければ実行していないだろう。TGVの中で、澁澤龍彦がモデルとして登場するとされる三島由紀夫の「暁の寺 豊饒の海三」を読みながらプロヴァンスに着いた。ちなみに、作家の遠藤周作もラコストを訪れたそうである。


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 もっとおどろおどろしいものや廃墟のように朽ち果てたイメージを期待していたのだが、ラコストは美しく整備されていた。高級ホテルのあるエズ村みたいだ、とすら思った。人口400人と言われているのに、観光案内所や公共のトイレがあって、地図をもらうこともできた。
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 フランスの鷹ノ巣村には既にいくつも行ったことがあるので、鷹ノ巣村そのものに感動ということはないのだが、コート・ダジュールのサン・ポール・ド・ヴァンスやエズ村などと違って、ここは、昼間でも観光客が少なく簡単に人の入っていない写真が撮れた。

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 村には、サド侯爵の顔が描かれた看板を掲げるレストランもあった。食事を終えた後だったので、立ち寄らなかったが、お値段も良心的で雰囲気も悪くなさそうだった。

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 出発前に、サド侯爵の城に電話していて、城が閉まっていることは、知っていた。6月から開くそうである。寧ろ行ってみると、案外、無料で立ち入れる範囲だけでも、いろいろ、見れるものだという印象を受けた。


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 確かにこの城は廃墟のようでも、牢獄のようでもある。
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 ラコストは、ボニューのように風が吹き荒れておらず、穏やかに暖かく、牧歌的な風景が広がっていた。夫は、ラコストの遠景、ラコストの村の通りなどに一番感動した、と言った。

 

 私は、バスの車窓からの景色を含め、リュベロンの雄大な自然の美しさが今回一番感動した。


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 リュベロンに来るのは2回目で、以前に来たときは8月でゴルドやルシヨンを回ったのだが、暑すぎて疲れてしまった。一方、冬にマルセイユミストラルを経験したこともある(夫は強風で眼鏡が飛ばされて失くなった)し、プロヴァンスの自然は厳しいなあ、というのがこれまでの印象だった。

 

 だが、予想に反して、ラコストの自然は、優しかった。ボニューが風が吹き荒れていただけに、ラコストの穏やかさが際立った。


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 そういえば、サドの小説の登場人物にも、ジュスティーヌとジュリエット、対照的性格の二人の姉妹のヒロインがいたなあ。私は、遠い昔に読んだ小説を少しずつ思い出し始めた。


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ラコストに行こうと思い立った4月の日記

https://clairefr.hatenadiary.com/entry/2021/04/15/065421